12月に行われるガソリン税の暫定税率の廃止に向けて、政府は石油元売り各社への補助金を段階的に拡大する措置を始めました。自動車のユーザーからは歓迎する声が聞かれ、ガソリンスタンドの中には小売価格を早速値下げしたところもあります。一方で、すぐには価格を下げられないというガソリンスタンドも。

各地の反応などをまとめました。

札幌のガソリンスタンド 小売価格を早速値下げ

このうち札幌市西区にあるガソリンスタンドでは、13日朝8時前にガソリンと軽油の小売価格を1リットルあたり5円引き下げ、レギュラーガソリンの価格をこれまでの169円から164円にしました。

スタッフは早速店頭に出す価格の表示を変更していました。

スタンドの運営会社によりますと、補助金の拡大にあわせて値下げすることで集客につなげたいと、多少の損失を覚悟の上で13日から値下げに踏み切ったということです。

給油に訪れた20代の男性は「物価が上昇している中、特に北海道の冬は車が必須になるので、ガソリンの価格が下がるのはいいことだと思う」と話していました。

スタンドの運営会社の小原隆宏取締役は「利用客からの問い合わせも多く、ガソリンの価格にかなり敏感になっている実感がある。いかにお客様に来てもらうかを最優先に考えて、きょうから値下げすることを決めた」と話していました。

富山 ドライバーから歓迎する声

一般財団法人の「自動車検査登録情報協会」の調査で1世帯あたりの自家用車の保有台数が全国で3番目に多い富山県ではドライバーから補助金の拡大を歓迎する声が聞かれました。

このうち富山市のガソリンスタンドを訪れた70代の男性は「富山は車でしか行けないところが多いので、車がないと不便だ。値段が下がることはとてもいいことだと思うので、安くなるとうれしい」と話していました。

別の70代の男性は「車によく乗り、月に3、4回ガソリンを入れるのでうれしい。これから冬用のタイヤになると燃費が悪くなるので助かる」と話していました。

一方、このスタンドでは補助金が拡大される前に仕入れた在庫があるため、13日の時点では価格を引き下げておらず、反映には一定の時間がかかるとしています。

値下がりを期待して訪れたという70代の男性は「これまでは170円台後半だったのできょうは170円ほどに下がっていると思っていた」と話していました。

スタンドの店長は「消費者の中には『きょうから値下げ』と思っている人もいるが、在庫を抱えているのできょうからすぐに価格を下げられないのが現状だ。ただ、消費者の声が気になるので在庫が残っていても多少の値下げはしかたない」と話していました。

松山のバス会社 経営環境の改善に期待

愛媛県を中心に路線バスや高速バスを運行する松山市のバス会社では暫定税率の廃止で経営環境は一定程度、改善するのではないかと期待しています。

この会社では所有する220台余りのバスのうち9割が軽油を燃料にしていますが、燃料にかかるコストはここ5年でおよそ1割上昇し、経営の負担になっています。

利用者の減少などで多くの路線が赤字になる中、運賃を値上げするなどして対応してきました。

中川智之自動車部長は「地方バスの事業が厳しさを増す中、一定の助けになると思う。抜本的に状況が変わるわけではないが一息つけるのでコストカット分を運転手の処遇改善に充てたい」と話していました。

鹿児島の運送会社「楽になったとは言えない」

ガソリンや軽油の価格が全国で最も高い状態が続く鹿児島県の運送会社では、暫定税率の廃止に向けて補助金が拡大されることについて経費の削減になる一方で、車両の価格や人件費の高騰が影響して厳しい経営環境は続くと受け止めています。

鹿児島県は、製油所からの距離が遠く輸送費が高くなることなどから、ガソリンや軽油の平均小売価格は全国で最も高い状態が続いています。

こうした中、長距離輸送を行っている鹿児島市の運送会社ではおよそ130台のトラックを保有し、県内各地のほか、卵やピーマンなどの生鮮食品を関西を中心とした都市圏に運んでいます。

1か月に使う軽油はおよそ200キロリットルで、経費のおよそ1割を占めていて、この会社では補助金が5円拡大することで、月に100万円の経費削減につながるため、暫定税率の廃止に向けた補助金の拡大を好意的に受け止めています。

一方、この3年間でトラックの購入価格がおよそ1.3倍に上がったことや賃上げに加え、トラックドライバーの時間外労働の規制が強化されたいわゆる「2024年問題」への対応でフェリーの利用が多くなり、費用が大幅に増えていることから厳しい経営環境に変わりはないとしています。

鳥部敏雄社長は「少しでも軽油の値段が下がってくれると助かるが、フェリーの利用などさまざまな経費が増えているので、楽になったとは言えない」と話していました。